シャーロック・ホームズの紹介(9)

 筆者は昨年の暮れに大病をして半年ほど「英語で読むシャーロックホームズ(読書会)」とこのブログを休ませてもらいました。元気になりましたので、このブログを再開します。



I moved my head to look at the cabinet behind me. When I turned again Sherlock Holmes was standing smiling at me across my study table. I rose to my feet, stared at him for some seconds in utter amazement, and then it appears that I must have fainted for the first and the last time in my life. Certainly a grey mist swirled before my eyes, and when it cleared I found my collar-ends undone and the tingling after-taste of brandy upon my lips. Holmes was bending over my chair, his flask in his hand.

"My dear Watson," said the well-remembered voice, "I owe you a thousand apologies. I had no idea that you would be so affected."

I gripped him by the arm.

"Holmes!" I cried. "Is it really you? Can it indeed be that you are alive? 

(The Empty House)

【日本語訳】

私は後ろの本棚を見るために振り返った。もう一度正面を向いた時、笑顔のシャーロックホームズが書斎のテーブルの向こうから私を見ていた。私は立ち上がり、数秒間呆然として彼を見つめた。そしてその後どうやら、生涯で後にも先にもそれ一度きりの失神をしてしまったに違いない。目の前にはっきりと灰色の霧が渦を巻き出したのを覚えているが、それが晴れた時、私は襟元を緩められており、唇に舌を刺すブランデーの後味を感じた。ホームズは懐中瓶を手に、私の椅子に屈みこんでいた。

「ワトソン」彼は聞き覚えのある声で言った。「本当に申し訳ない。君がここまで驚くとは考えてもみなかった」

私は彼の腕を掴んだ。

「ホームズ!」私は叫んだ。「本当に君か?君は本当に生きているのか?あの恐ろしい奈落から這い上がってこれたのか?そんなことがありえるのか?」

「ちょっと待ってくれ」彼は言った。「君は話をしても大丈夫なのか?僕は不必要に劇的な登場で君に深刻なショックを与えてしまった」

「私は大丈夫だ。しかし本当に、ホームズ、自分の目が信じられんよ。本当なのか!君が、 ―― よりによって君が ―― 、私の書斎に立っているとは」私がもう一度彼の袖を掴むと、その下に細い筋張った腕が感じられた。「ともかく、君は幽霊ではなさそうだ」私は言った。「君に会えて本当に嬉しい。座ってくれ。・・・」

『空家の冒険』



【コメント】

「最後の事件」で犯罪界のナポレオンと言われるモリアティ教授とともに1891年にライヘンバッハの滝に落ちたホームズは1894年に復活を遂げました。この三年間は「大空白時代」と呼ばれています。死んだはずのホームズがワトソンの目の前に現れた場面で、ワトソンは気絶してしまいます。筆者は半年の空白期間でしたが、ホームズと同様に復活しました。

「英語で読むシャーロックホームズ」を世にこれからもしっかり広めたいと思います。





Sherlock Holmes in English 2019

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